【d!】心まで、透明化してよ (ページ41)

今日:364 hit、昨日:1,078 hit、合計:108,988 hit

41話ページ41

廊下

「…大丈夫なんですが。」
os「ええから」
「無能の世話なんてしたいんですか？。」
os「んー、そうかもね」

os「…少し、寄り道するわ」
「…」

オスマンさんの運転は、静かだ。
窓と窓までにかかる時間が長く
景色もあまりなく見てしまった

寄り道って、どこに行くのか
…尋問室？それとも処刑台か？
もしかしたら新手の方法を
思いついたかもしれない

…できれば、そうであってほしい

花畑とか言われたら、何とかして
《嫌われる態度》をとって
逃げなければ。

オスマンの部屋

os「久しぶりのソファはどう？」
「…慣れてないので困惑しています」
os「せやねぇ」

「…」

オスマン様のこだわり紅茶は、
素人にはわからないが特殊な
効果とか、匂いがあるらしい

半年前も、今も
わからないや

os「…バームクーヘンも、マカロンも」

「ありがとうございます…、
…要件は、なんでしょうか」

os「……」
os「いつまで、その冷たい態度すんの？」

Aの手が止まった。俺の目を
じっと睨んで手先や足先が固まった

os「…もう耐えきれへんねん」
os「無能のふりなんてやめろ」
os「あんたには向いてへん」

Aは、なんのこと？って

苦笑いしていたが
俺が無能のフリの証拠を列挙すれば
次第に青い顔をして喋らなくなった

os「…」

「…だから、なんですか」
「無能のフリでも、なんでもいいんです」

「そうじゃないと、……ｯ…」

os「…」

os「逃がさんから」
「ｯ！」

Aが、後ろに回した手で車椅子を
とろうと伸ばしていた。逃がしてやるもんか

もうウンザリだ

君が、いなくなる恐怖なんて
もう二度と味わいたくない

os「話して？」
「はな、して、」

ソファを選んだ理由がわかった
簡単に彼に組み敷かれて、動けない
手首も、腹も彼の重心がのっかかって
まるで彼自身が手錠みたい

「…はな、したら、貴方は否定する」
「否定だけ、する」

「でも、あなたは、きっと」

「《あの時》みたいに、私がピンチになったら
ボロボロになってまで助けに来るんでしょ？！」

「だから、お願いします」
「嫌いに、なって、ください……」

os「…」

1日たりとも忘れたことがなかった記憶が
二人の間で爆発した。俺らは、何も言えず
そのきっかけを、水晶体にうつしていく

半年前の、ことだった