規範になれない人【実話日記】

少年の日のそんな奴だった ページ18

(ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』に関するネタバレが含まれます)



中学2年生くらいのみなさんならきっと大好きなセリフ


「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」
(ヘルマン・ヘッセ『少年の日の思い出』より)


みんな大好きエーミール。希少な蝶を育てるところから標本にして、ライバル兼友達に見せようとしたらぶっ壊された男です。普通に可哀想。



この話の主人公「僕」は、たしかに自作の蝶の標本にケチをつけるエーミールに反感を抱いていました。エーミールの環境、つまり高い機材で標本を作れる財力にも嫌気がさしていたでしょう。

ここまでの気持ちはよくわかります。

でも「僕」くん、自分でも希少性がわかっていたはずのものを……どうして……。わざと壊したわけじゃ無くても、許されないですよ。



読む人によっては、この後「僕」の言葉を否定するエーミールに意地悪な奴だと言います。謝罪を聞き入れるべきだ、と。



読む人によって物語は変わりますね。筆者はエーミールが事件後に取った対応を正当だと思います。意地悪とは思えません。

そもそも標本にケチをつけているのだって、エーミールなりのアドバイスだったかもしれませんから。財力への嫉妬心は仕方ないと思いますが。



筆者はおそらく、純粋さや自由さを恐れています。

子供心の自由な行動が、悪意がない純粋な向上心が、誰かにとって大切なものを脅かしていたら。それを恐れているのです。

「僕」とエーミールも、クジャクヤママユの破片を見てから思ったはずです。悪意ない自由を恐れるべきだ、と。



筆者にとって少年法がピンと来ないのも、これが理由でしょう。たとえどのような存在であっても、罪は裁かれなくてはならない。


その分、自分にも厳しくないといけない。自分が不意に起こした事故、やってしまったミスもきつく取り締まらなくてはなりません。



うっかり言ってしまったデリカシーのない言葉も。

人をからかった後、「このくらいのことで悪者扱いするな」とか宣う人間も。

思わず目の前にあった宝物(クジャクヤママユ)に手を伸ばしたことも。


自由は悪意なく罪を生む。




もしかして、「自由を自分で取り締まるなんておかしい」と思いましたか？



今、あなたが筆者を肯定したか否定したか、はたまた中立の立場をとっているかわかりませんが……

どちらにせよ、思考の題材になれば嬉しいです。思考する素敵な週末をお過ごしください。

分裂式バニー芳一理論→←理想郷に行こう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す