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精神科医として長く働いているが、裁判に立つ経験はあまり無い。とても緊張していて、手も足も声も震えていた。
「 まず、河系先生にお聞きします。被告人はどの様な精神状態でありましたか？ 」
「 被告人は幼少期、母親の再婚相手から性的な虐待を受けていました。その影響から、女性的に振る舞う様になったと考えられます。 」
「 幼少期に性的な虐待を受けた被害男児は、女性的な振る舞いをするケースが多いのですか？ 」
弁護人と目が合った。今、自分が何を言う為に此処に立たされているのか、分かっている。理解している。良い大人なのだから、全て分かっている。でも、抵抗があった。喉の奥に引っ掛かっている言葉を、必死になって引っ張り出す。仕事なのだ。これが、俺の仕事。
「 人格が分裂するケースは、多くあります。 」
傍聴席から声が上がり、裁判官が注意した。あの、眼鏡の記者も声を上げただろうか。気になったが、後ろを振り向けば扉を目掛けて逃げ出しそうになる自分が居て、そんな勇気は持ち出せなかった。
「 つまり、被告人は多重人格者と言う事ですか？ 」
「 はい、被告人は解離性同一性障害だと診断しました。 」
自分を守る為に、もうひとつの人格を作る事は良くあるケースだ。珍しい事じゃない。海外でも、日本でも、そう言う事例は数多くある。だが、多重人格を精神科医である俺が認めてしまえば、司法はどんな風に傾く？そんな事も、分かっている。
「 でも、解離性同一性障害だからと言って、心神喪失に当て嵌りませんよね。普通に処罰が下されると思います。 」
誰の声か？驚いて、声な主を探した。見付かった。目が合ったのだ。" 彼女 "は此方をじっと見ていた。驚いた俺が何も言う事が出来ず、ただ、彼女を見ていた。
「 狡いですよ。心神喪失状態なら、重罪を免れる事が出来るなんて。 」
まるで、今日の裁判が自分の為に用意されたパフォーマンスだと思っていなさそうな彼女は、ひとりの一般人として意見を申し立てた。
此処にやって来た時、彼女はAだった。だが、氏名を聞かれた時、彼は波多遊太だった。でも、今はAになっている。何故だ。入れ替わったのだ。人格が、入れ替わった。
「 君は、波多遊太の事をどう思ってる？ 」
俺から絞り出された声は、醜かった。 裁判官に止める様に窘められたのに、続けた。
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紗枝(プロフ) - Sさん» こんばんわ。コメント有難う御座います！此方こそ、応援して下さり、とても嬉しいです☺ 最近、ひとつひとつの作品に掛ける時間が長くなり、更新頻度は絶望的になりましたが、頑張って更新したいと思います。これからも宜しくお願い致します🤝 (7月20日 2時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
S - 続編ありがとうございます🙇♀️これからも応援してます (7月19日 7時) (レス) id: 3cdb4a4830 (このIDを非表示/違反報告)
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