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「 有難う御座いました。最後にひとつだけ良いですか？分かる人だけ、分かれば良いです。あのとき、貴女が泣きながら帰る背中を見て、何の怪我もせず、金銭的にも困らず、こうして適当に生きていてもオリンピックに行ける自分が如何に恵まれているか知りました。怪我をして、愛する世界を去ってから、貴女がどうやって生活しているかは知りません。だけど、僕の事を覚えてくれているなら、このインタビューも見てくれていると思います。僕も、あのときの貴女の様に、水の世界から去ります。金メダルが取れなくても、表彰台に立てなくても、今回のオリンピックで引退をする予定でした。最後に、大きな花火を打ち上げられた事は、嬉しく思っています。安心しました。自分が、貴女より強い存在なのだと。貴女は逃げたけれど、僕は逃げなかった。両親からの呪縛から、解けなかったから。今も、貴女の事を思い出します。貴女が僕にどんな事を思っているのか、想像が付きません。でも、ひとつだけ言わせて下さい。あのときは、有難う。 」
畳んでいた洗濯物をゆっくりと絨毯の上に置き、隣で眠っている愛娘の様子を確認した。優しく彼女の頭を撫でると、愛おしい彼女は夢の中で微笑む。静かな音で奏でていたテレビを消し、彼女の事を起こさない様に立ち上がった。
子供を産んでも連絡を取り合っていたちあきから、シャオロン君がローマオリンピックに出場すると言う報せを聞いた時、驚きもしなかった。シャオロン君のレベルなら、オリンピックなんて序の口だし、これからも泳ぐ事を続けていれば、更に歴史に名前を刻んでいた筈。シャオロン君が水泳選手を引退して、隠居を決意した事も、特に驚きもしなかったが、私の事に触れるとは思っていなかったから、その点ではとても驚いた。
「 あのときは、有難う。 」
その言葉がどんな意図を含み、何時の出来事について話しているのか、見当は付いていない。だけど、私が水泳を辞めて何も無い人間になった事に対する皮肉なのであれば、全て受け止めるつもりだ。だが、もしも、私がシャオロン君と最後に交わした会話の事を言っているなら、私の方こそ礼を言うべきだ。
「 全部嘘。 」
私が最後の言葉を言い切った後に、振り向いた。シャオロン君は恨めしそうに此方を見ている。自分で突き飛ばしておいて恥ずかしいが、私はシャオロン君に駆け寄り、手を差し伸べた。
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紗枝(プロフ) - Sさん» こんばんわ。コメント有難う御座います！此方こそ、応援して下さり、とても嬉しいです☺ 最近、ひとつひとつの作品に掛ける時間が長くなり、更新頻度は絶望的になりましたが、頑張って更新したいと思います。これからも宜しくお願い致します🤝 (7月20日 2時) (
レス) id: ed8861063f (このIDを非表示/違反報告)
S - 続編ありがとうございます🙇♀️これからも応援してます (7月19日 7時) (レス) id: 3cdb4a4830 (このIDを非表示/違反報告)
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